さて、いきなりですが動画をご覧ください(音あり推奨)4年ほど前、アメリカの国立公園でボランティアをやっていた時に撮影した動画です。
ここに写ってるのなんだかわかります?
ジーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!
蝉の鳴き声じゃなく、ヘビが尻尾を激しく振ることで出す音。
これはガラガラヘビといい、日本に生息するマムシやハブと同じクサリヘビ科、もちろんコイツも毒蛇です。北米〜南米に分布するグループで尻尾を激しく揺らして音を鳴らします。しっぽの骨にヒミツがあって、空洞だから振ると赤ん坊のガラガラのような音をだせるのだとか(ガラガラというより時代劇の効果音っぽい)。
音をこんなふうに鳴らしてくれればこっちも気づくのに、じっととぐろを巻いてうずくまっていれば、地面の色にとけこんで全く気づかない。
下の写真も、
そんなガラガラヘビの猛毒ですが、「毒の多様性と進化」に着目した、おもしろい論文が発表されました。毒の多様性?って思うかもしれないけれど、ネットを漁れば「最強の毒蛇は?」みたいな記事があるし、そういやマムシとハブで毒の強さが違うなんて話もあるし、種によって違うっぽい(そりゃそうか)。今回はその一つをご紹介。
Current Biology誌から2016年に出た
The Deep Origin and Recent Loss of Venom Toxin Genes in Rattlesnakes
訳すと「ガラガラヘビの仲間におけるヘビ毒遺伝子の古い進化的起源と最近の喪失」となるでしょうか。
やってることはすごく真面目。ヘビ毒の多様性に注目して、ガラガラヘビの仲間何種類かを使い、毒の遺伝子の構造を調べ、ガラガラヘビの毒の進化に着目したという研究。
ここでは、ガラガラヘビの毒遺伝子の1つ、PLA2(ホスホリパーゼA2)の遺伝子群にターゲットを絞って詳しく調べています。
わかったこと1
PLA2遺伝子群は種によってことなり、同じ種でも構造・発現量にバリエーションがある。![]() |
3種のガラガラヘビ毒遺伝子PLA2遺伝子群の 構造&発現量比較(Fig1改変) |
わかったこと2
PLA2遺伝子はクサリヘビ科で発展してきたけど、ガラガラヘビでは最近になって遺伝子の一部を無くしちゃった![]() |
いろんなガラガラヘビで比較。神経毒をもつ祖先から
神経毒を失ったものがうまれてきたことがわかる。(Fig2改変)
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ガラガラヘビ以外も加えた系統樹。PLA2遺伝子の起源はかなり古く ガラガラヘビでその一部が失われた(Fig5を改変) |
![]() |
ガラガラヘビの祖先における、PLA2遺伝子の進化メカニズム |
ちなみに、このグループ、似たような切り口でガラガラヘビの出血毒についても研究しており、同じくCurrent Biology誌から2018年に論文を出しています。
感想1
色や形が様々だったり、今回のようにいろんな毒を作り出したり…どうして生き物はこんなに多様なんだろう?どうやってこんなにもいろんな生き物が進化してきたのだろう?そんな、生物多様性と進化に着目した研究は古くからなされてきた割に、遺伝学レベルまで突っ込んだ研究は分類学や生態学と比べたら決して多いとは言えないのが現状という印象。とはいえ、解析技術の進歩と低価格化が進む今日のこと、少なくとも向こう10年ちょいは、今回紹介したようなアプローチの研究が動植物を問わず主流になることは間違いありません。感想2
実のところ、今年読んだ中で、個人的におもしろいと思った論文は1930~80年の研究ばかりでした。そんなわけで2000年以降の論文選びには苦労しました。古い論文は結構フリーダムでネタが面白いものが多いのです。生き物系は特にそういうものが多いので、気が向けばぼちぼち紹介記事を書く…いや、僕自身の研究テーマになる、かも!乞うご期待。感想3
しゅうろんやばーい感想4
みなさんお気づきかもしれませんが、論文の内容云々より見て見て!ガラガラヘビすごくない?と言いたい放題の記事になっています
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